ジャッポネーズ
谷崎潤一郎 『陰翳礼賛』
~西洋との本質的な相違に眼を配り
かげや隈の内に日本的な美の本質を見る~
読んだよ
観察力もすごいけど
その事象を確実に言葉で捉えていることがすごくて
ものごとを見る目と同時に言葉もやっぱり大切で
そうやって一人の感覚だったものが伝わり万人の感覚になってゆくんだと
お椀の話
ー食器としては陶器も悪くないけれども、
陶器には漆器のような陰翳がなく、深みがない。
陶器は手に触れると重たく冷たく、
しかも熱を伝えることが早いので熱いものを盛るのに不便であり、
その上カチカチという音がするが、
漆器は手触りが軽く、柔らかで、耳につく程の音を立てない。
私は吸い物椀を手に持った時の、掌が受ける汁の重みの感覚と、
生あたたかい温味とを何よりも好む。
ー略ー
漆器の椀のいいとこは、
まずその蓋を取って、口に持って行くまでの間、
暗い奥深い底の方に、容器の色と殆ど違わない液体が
音もなく澱んでいるのを眺めて瞬間の気持ちである。
人はその椀の中の闇に何があるかを見分けることは出来ないが、
汁が緩やかに動揺するのを手に感じ、
椀の縁がほんのり汗を掻いているので、
そこから湯気が立ちの昇りつつあることを知り、
その湯気が運ぶ匂に依って口に啣む前にぼんやり味わいを漿